Detroit

デトロイト研修レポート 京都大学医学部医学科4回生 梅本 大地

⑴ 実習概要
2016 年 8 月 20 日から 8 月 27 日に至るまで、デトロイトで循環器内科をされている山崎先生の勤め先の病院にて、研修をさせていただきました。この研修はマイコースプログラムの一環として行われているもので、1 月の循環器内科の授業中に、天理よろず病院の中川先生から紹介していただく、という形です。
山崎先生は京大医学部を卒業後すぐにアメリカで内科のインターン、レジデントトレーニングを受け、その後アメリカで、循環器科で三年、インターベンション科で二年、フェローシップのトレーニングを受けた方です。実習は、1 週間の間、基本的に山崎先生の後ろについて周る、という感じでした。先生は、外来患者を診察するオフィスといくつかの病院をかけもちされており、それらを行ったり来たりしました。宿泊は山崎先生の立派な豪邸に寄せていただき、毎日奥さんのおいしい食事をいただきました。先生のお宅はプールがあったり、卓球台やビリヤード台があったり、ととても大きなお屋敷でした。晩御飯にはバーベキューをしていただいたり、ワインを開けて頂いたりと至れり尽くせりの毎日で、先生と奥さんのおかげで毎晩楽しい時間を過ごすことができました。とは言え、毎日朝 6 時ごろに起床し、 7 時には病院に到着し、4 時から 5 時くらいまで先生の診察や手術を見学させていただくというように、とても規則正しい生活で、実習もかなりハードで、毎晩 9 時頃には就寝していたようにも思います。

⑵ 実習内容
1 週間の具体的なスケジュールを示すと、
8 月 20 日デトロイト空港に到着。そのまま就寝。当初の予定では午後の 10 時に空港につく予定でしたが、大幅に飛行機が遅れてしまったため到着したのは午前の 3 時になってしまう失態をおかしてしまいました。
8 月 21 日時差ぼけに体を慣らすための休息日を設定していただきました。フォード博物館やその周辺の施設の散策をしました。
8 月 22 日実習初日は一日中オフィスでの外来の見学をしました。心筋梗塞をはじめとする心疾患を発症したことのある患者さんの定期的なフォローを主に行っていらっしゃるようで、例えば心房細動を抱える患者のワルファリンの血中濃度測定や、病態に変化がないか、浮腫ができたりしていないか、などを入念にチェックしていらっしゃいました。そして夕方は病院のほうに移動し、カテカンファレンスを見学しました。実習一日目ということで、時差ぼけもあり、初めての場所ということで緊張もありで、本当にくたくたになった記憶があります。
8 月 23 日火曜日はマコーム病院またはボーマント病院での回診でした。
8 月 24 日水曜日はセントジョンで心カテと回診を見学しました。大動脈弁狭窄症に対するカテーテル治療である TAVI も見学することができました。
8 月 25 日木曜日は一時間のカンファレンスののち、オフィスでの回診を見学しました。このカンファレンスでは PCI を行う際に、冠動脈の石灰化がひどく、カテーテルを通すのが困難な際にも血管壁を突き破ることなく治療を行えるという機械の説明をされていました。
近々日本でも導入予定だ、と教えてくださいました。
8 月 26 日には朝インターベンションカンファレンスのあと、セントジョン病院で回診を見学し、PCI を何件か見学しました。
一週間の流れを軽く説明するとこのような感じですが、先生は循環器に限らず幅広い分野の知識を教えてくださいました。また、今回はとてもラッキーなことに卒業 3 年目の先生も研修に参加されていたので、山崎先生が手術中の時なども、手技や画像の見方を説明していただいたので、とても良い勉強になりました。
 

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⑶ 考察と感想
もっとも僕が印象に残ったことは、さまざまな国出身の医師がアメリカの病院で働いていたということです。私たちに気さくに話しかけてくださった先生の中には、パキスタンやインド、ネパール出身の先生がいらっしゃりました。日本人にとってみれば、アメリカで医師をするためには日常会話はもちろんのこと、英語であらゆる医学用語を覚え直さないといけません。しかし、彼らはそもそも英語で医学を勉強しているそうで、アメリカの医師国家試験を受ける敷居が日本の医学生よりも低いということだそうです。私は、普段の勉強において、日本語だけでなく英語でも疾患や医学用語を覚える必要があるのだな、と痛感しました。
また強く思うのは、英語力が全然足りない、ということです。これはこのような実習に限らず、海外に旅行に行ったことのある人なら多くの人が思うと思いますが、私もその一人でした。アメリカ人の英語は、母国語として英語をしゃべっているだけあり、とてもスピードが早く、さらに聞きなれない医学用語が英語で混ざっているので、聞き取るのが非常に難しかったです。病院のスタッフの方や、患者さんなど、多くの方が気さくにしゃべりかけてくださっているのにまともに会話できず、歯がゆい思いをしました。なかなか日々の生活の中で英語を話す機会を設けるのは難しいですが、積極的に英語を勉強しなくてはならないな、と思いました。
 

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(4) まとめ
この実習を通して、循環器科の医師というもののイメージをつかみ、またアメリカで医師をするというキャリアがどのようなものかを知ることができ、本当にいい経験になりました。山崎先生をはじめ、先生の奥さんや、当実習を紹介して下さった循環器内科の尾野先生、中川先生、また現地でお世話になったスタッフの皆様、本当にありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。



デトロイト研修レポート 京都大学医学部医学科4回生 廣畑 隆之

  1. 背景
     将来、海外で医師をしたいという願望があり、かつ循環器に興味を持っていたため、今回のデトロイトでの研修に参加させて頂きました。実習はアメリカ、デトロイトで数人のグループを作って開業していらっしゃる山崎先生のもとで、山崎先生のお仕事を見学させていただくというものです。
     
  2. 目的
     研修において、まず循環器内科の知識をしっかり蓄え、次に循環器内科の診察、治療、経過観察などを見学しながら、アメリカでの開業医の労働環境や病院の様子、日本の病院や、大学病院との違いを学ぼうと考えていました。
     
  3. 実習内容
     研修期間中には、全体的に、山崎先生の指導のもとofficeでの外来患者の診察を見学、病院で心カテの見学(造影CT,IVUS,下肢大腿部ステント留置,LADステント留置)、カンファレンスに参加、などをさせて頂き、その都度わからないで箇所を、質問形式で先生から丁寧に教えていただくという研修でした。
     生活は朝6時起きで7時からカテーテル又はカンファレンス、その後昼食をはさみ夕方5時すぎに仕事が終わり、夜6時に夕食、11時頃に就寝というスケジュールでした。

    ① 1、2日目 20(土)、21日(日)
     デトロイトの空港に到着し、山崎先生にお迎えいただきました。僕たちは遅い時間に到着し、先生に多大なご迷惑をおかけしたので、早い時間に到着する事をお勧めします。次の日には、ヘンリフォード博物館に連れていっていただき、代々大統領がのっていた車の展示や、ライト兄弟の飛行機発明の歴史などをみるなど、デトロイトの観光に連れていってくださいました。

    ② 3日目 22日(月)
     この日は、先生が開業してらっしゃるofficeで外来患者を1日診察する日でした。患者さんはすでに安定している方がほとんどで、経過観察をし、必要に応じて薬を変更する、などが多かったですが、気になったのは、新しく治療などを選択するときに、その患者さんの保険に適用しているか否かが重要で、否の場合はすごく高額なお金を払う、もしくはただ耐えなければならないという事でした。実際に補聴器が必要という方で補聴器を買えないという方もいらっしゃいました。

    ③ 4日目 23日(火)
     この日は、午前はセントジョン病院で心カテの後、午後はボーマン病院、マコム病院での入院患者の回診でした。心カテでは、病院の特色にもよるとは思うのですが、終始チームのみながいい意味でリラックスして手術をされていて、看護師の方も英語も拙い僕らに親切に経過を教えてくれて、とても勉強になりました。
    午後の回診では、心房細動や先天性疾患、房室ブロックの機序、治療法を先生が詳しくひとつひとつ教えてくださり、心電図をみれば少しは病態を言えるようになりました。

    ④ 5日目 24日(水)
     この日は、セントジョン病院で丸一日心カテの見学でした。造影やIVUSの利用、虚血性心疾患の方の冠動脈ステント留置を見学しました。病院の特色か、アメリカの分化かはわかりませんが、スタッフの方々は本当に分け隔てなく笑顔で話しておられ、仕事は仕事で、その間はすごくリラックスしておられるなと感じました。やはり、敬語などのしっかりした日本語より、ある程度目線をあわせて話す事が出来る英語を使っている事や、アメリカのopen-mindedな文化が居心地のよさに繋がっているのかなと感じた光景でした。

    ⑤ 6、7日目 25(木)、26(金)
     両日とも、朝は心カテ、昼からオフィスで患者さんのフォローアップという流れでした。木曜日にしてようやく英語に慣れ、何が行われているか積極的に質問でき、患者さんが何を訴えているのかがわかるようになり、あと少しで帰らなければというのを悔しく思っていました。患者さんの印象としては、やはり日本よりも肥満の方、喫煙者の方が多く、禁煙、運動、食習慣という、指導がとても難しいものが問題である人が多いように思えました。その中で、山崎先生はとても信頼されていて、「次までに少しでも頑張ってくる!!」と言って帰られる方が多く、こういった信頼や、この先生が言うのなら、と思わせるような先生の人柄も医師には必要なのだなと肌に感じた瞬間でした。
     
  4. 実習を通して
    ・アメリカと日本の違い
     開業の仕方が印象的でした。山崎先生の病院では、複数人で医院を開業し、より危険な患者さんは提携している病院に入院してもらい、回診を自分たちで行う、また当直は共同で開業している医師でまわすというものでした。後期研修を終わってすぐに開業をする人も多いようで、日本よりもしがらみといったものが少なく、本当に自分の腕とやる気さえ有れば、というアメリカの流れが有るような気がしました。
     他には、conferenceにおいて年上先生も若い先生もみな同様に発言されていて、質問、解答ともに全員が意欲的だなと感じました。やはり英語と、アメリカのopenな文化によってみな対等に話すことが可能になっていると思いました。

    ・山崎先生について
     オフィスで患者さんをみている時、山崎先生はことあるごとに患者さんの顔を見て優しく語りかけていたのが印象的でした。患者さんもよく僕たちに話しかけていただき、何度も「この先生は本当にいい先生だ。君たちはこの先生に教われて幸せだ。」と言っておられ、他にも「この先生のようになりなさい。」と何度もいわれ、いかに先生がデトロイトで患者さんから信頼されているかを日々感じていました。また、極めつけは、帰りの空港で偶然話した、デトロイトで医師をしているというネパール出身のnephrologistの方から、「日本人といえば、Dr.Yamasakiじゃないか?彼は有名だよ」と言っておられ、卒業後アメリカにきていかに名誉のある大事な仕事をなさっているかを再認識しました。
     また先生は循環器内科に関する知識を中心にあらゆる、関連する疾患や他の科の知識を全般的かつ詳細にもっておられ、やはり患者さんは複合した疾患が多い中、様々な知識をもとにしっかり治療方針を決めてらっしゃるという印象でした。これをみて、今大学生としてできることは、しっかり勉強する事、それが信頼や明確な決断に繋がると感じました。

    ・アメリカでのPCI
     PCIについて、アメリカの医療といえば全て最先端だと僕は考えていたのですが、やはり地域によって差があるようでした。山崎先生が、こっちのやり方の方が便利だと、St.John病院であまり普及していなかった術式をよりpopularにしたという例もあったそうです。アメリカで医師をやる理由も、ただ最先端、だけでなく、考え方がこっちの方が楽、や、稼ぐため、など様々で、仕事場の雰囲気を見ていると僕もアメリカで絶対働いてみたい、と強く感じさせられました。
     
  5. 最後に
     今回の実習では、空港への送り迎えをもとに色々な事を教えてくださり、また遊びまで連れて行ってくださった山崎先生、また毎日、朝食夕食を用意してくださり、なにかと色々話を聞き相談に乗って、サポートしてくださった奥さんには、本当に感謝の言葉しか有りません。また、マイコース先を紹介して下さった、尾野先生、中川先生に感謝いたします。この経験を糧に、大学生活をしっかり過ごしていきたいと思います。

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