Detroit

デトロイト研修レポート 京都大学医学部医学科4回生 甲斐日向太

【背景】
    循環器S1の授業にて、3年生の1-2月頃、天理よろづ相談所の中川先生先生がこのプログラムについて学年の全体に教えて下さいました。10年以上続くプログラムであり、毎年京大医学科の4年生が夏に京大卒後、アメリカで長い間臨床をされている病院にシャドウイングを1週間しに行くという内容でした。海外での臨床をしてみたいという気持ちを3年生の頃から、持っていましたので、その話を聞いてまよわずアプライしました。

【目的】
    循環器内科、特にカテーテルによる治療を専門とされている先生の元で、アメリカのeducationally-orientedな病院で専門医として、働くことについての理解を深める。
循環器内科の臨床における基礎的な知識のbrush up。
アメリカで働くことのrisk & benefitについて経験豊かな方達の話を聞く。

【研修内容】
    山崎先生はSt. John病院で働かれて10年以上になります。Catheterによる治療をメインにその後のフォローアップとしての患者の回診、初診の患者の問診、Cardiologistsのカンファレンスを毎日7:00-19:00の時間帯で見学しました。とは言え、間の時間がありますので、その間は先生から出していただいた問いや、自分の中で先ほどみたことについて整理するということをしていました。
病院にいる際の持ち物として、私はiPad, notepad, review book(内科外科),カラーペンを常に持ち歩いていました。USMLE step1を学生のうちに受けるつもりでしたので、先生の話、自分が見た症例についてiPad内のKindleで購入したFirst aidを読みながら復習していました。
個人的に一番勉強になったことは、循環器疾患とそれ以外のcomplicationsを持つ、患者のMedicationについて、chart(カルテ)を見せてもらい、確認できたことです。名前はGenericのものもあれば商品名がないとわからないものも有りました。
例えば私が良くチャートで見たmedicationを列挙するなら

・Aspirin(特に81mgのものをbaby aspirinという)
・Clopidogrel (Plavix)(ADP receptor inhibitor at platelet cells)
・Metoprolol
・Nitroglycerin
・Vitamin D
・リシノプリル

等々です。これらのことについて私が考えたのは、日本語で自分は当然のごとく正しいジェネリックの薬の名前を覚えていると思っていても実は読み方が間違っているということが多々あるということです。
例えばFurosemideはまず日本ではフロセミドとならいますが、アメリカではヒューロセマイドの方が、近い発音です (i.e. isopropanol )。完全に全てアメリカの単語的な読み方するのが、正しいというわけでもないですし、いちいち日本で勉強しているときにそのように考えるのは面倒だという批判もあるかもしれませんが、折角英語で勉強しているのにいざというときに使えないというのは何とも悲しいことだと思います。ですので、これからは、日本の薬剤名についてはある程度懐疑的に勉強しなければならないな、と感じました。
蛇足かもしれませんが、筆記体(cursive)も結構常用します。Handwritingの際には。カルテはかなり電子化されている印象でしたが、それでも医療関係者の書く速記には慣れておく必要があると思います。

カテーテル見学ですが、1週間の間に初日に2件、木曜日に2件ありました。中でも、TAVI(経カテーテル大動脈弁留置術 trans-catheter aortic valve implantation)は循環器の授業でも言及されていたかなり新しい治療法です。学生はモニター室から先生の手元やエコー、放射線によるディスプレイから手技の一部始終をみせてもらえました。その間もちろん先生とは話せないのですが、病院のスタッフ達、はとても親切に説明してくれました。教育病院のmindsetを感じる一面でした。英語の早口というのはわかりにくいものですが、ある程度、自分の聞きたいポイントを絞れば、欲しい情報は手に入ると思います。英語ができなければ、この研修ができないかといえば必ずしもそうだとは言えませんが、ある程度の医学英語を身につけていかないと(tachycardia, systolic, arrhythmia, ASD, MR, congenial)、いちいち同級生 or 先生に聞かなければいけないので、学生にとってメジャーである、病気がみえる循環器にでてくる英語くらいは覚えておいたほうがいいと思います。

 

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今回参加させて頂いたメンバーは滋賀医大、九州大から各1名、京大から2名でした。

ビザについては必要ありません。むしろ、一週間の研修なので、入国審査の時に観光とこたえてしまうのが賢い方法です。ESTAは取得してください。簡単にできます。

宿泊先ですが、何と一週間山崎先生のお宅に学生4人がとまらせて頂きました。デトロイトセントクレア湖の湖岸の閑静な住宅街の豪邸でした。2013年からお世話になっているようです。ご負担をおかけして申し訳ありません。

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週末には、到着直後の土日は近辺の観光に山崎先生の車で連れて行っていただきました。フォード博物館の写真を載せておきます。

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【最後に】
海外の臨床の場で、勉強するということが、たった1週間であったとしても、自分の人生にこれから大きな影響を与えると確信しています。また同じく研修を共にしたメンバーにも恵まれ、切磋琢磨できたと思います。先生は問診の際も、スタッフとの会話の際も笑顔を絶やさない方でした。それ故か、周りから信頼される医師であるということは短い間の私達にも見て取れるものでした。毎日働きながらも家族との時間も大切にされる、先生のライフスタイルは自分が想像していたアメリカ人cardiologistは激務であるという認識と少しのズレを生みました。先生は確かに激務ですが、仕事以外のことも大切にされているように思えました。とはいえ、昔話をお聞きすると、やはりresidencyの時などは今と比べるまでもなくとても忙しかったようで、そのような時を乗り越えて現在があるのだなとも考えられました。
このように、様々なことに思いを巡らせばきりがないほど、濃い8日間でした。
貴重な機会を与えていただいた、山崎先生、尾野先生、中川先生に改めて感謝を申し上げたいと思います。

 

 

 

 


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