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血栓制御研究グループ

当研究室の概要

 我々の研究グループでは、血栓制御を目標に基礎的/臨床的に研究を進めている。基礎的には、急性心筋梗塞等の引き金となる血小板活性化の分子メカニズムについて研究している。生化学的アプローチをベースにしており、独自のアッセイ系を構築し、新規関連分子を得意としている。そして、本生命現象を解明することを目的としている。臨床研究は、血小板機能解析チームにより、多くの症例で血小板凝集性を解析することにより、抗血小板薬の薬効評価を行っている。日本人の診療に役に立つ情報発信を目標としている。基礎研究、臨床研究とも現在非常に充実しており、我々と一緒に研究をしてみようという方を募集しています。
 私たちが血小板の研究で見出した情報分子Rab27やMunc13-4が家族性血球貪食症候群の原因遺伝子となっていたことから、私たちの研究室では、下記の要領で、血球貪食症候群関連蛋白質のスクリーニングを担当しております。このページの最後にサンプルの送付手順を掲載致しております。

所属者

  • 堀内 久徳(東北大学加齢医学研究所教授、非常勤講師)
  • 白川 龍太郎(客員研究員)
  • 山根 啓一郎(大学院生)
  • これまでの在籍メンバー:
  • 西岡 弘晶(現、名古屋記念病院総合内科)
  • 吉岡 亮(現、三菱京都病院内科)
  • 田渕 新(現、ベルリン自由大学生理学教室)
  • 近藤 博和(現、大阪赤十字病院循環器内科))
  • 川戸 充徳(現、西神戸医療センター循環器内科)
  • 東 智仁(現、神戸大学医学研究科細胞生物学教室)
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研究内容

臨床研究について

I. 抗血小板薬の薬効評価に関する研究

1.ClopidogrelとCYP2C19

今日、我が国では冠動脈ステントによって年間10万人以上が治療されているが、ステント血栓症の予防が必須である。アスピリン+ADP受容体拮抗薬による2剤併用の抗血小板療法が有効であることが見出され、現在、この2剤が標準的に用いられている。ADP受容体拮抗薬としては、これまで肝障害等の副作用が多いことで知られるticlopidineが用いられてきたが、最近、抗血小板効果は同等で副作用が少ないとされる第2世代のclopidogrelが日本に導入された。しかし、clopidogrelが示す抗血小板効果には個人差が大きいことが欧米の研究で報告されている。そこで、我々は、clopidogrelの抗血小板作用を30症例で体系的に評価した。その結果、日本人の14%には、clopidogrelは、ほとんど抗血小板機能を発揮しないことを見出した(1)。

血小板内の情報伝達

また、clopidogrelは、prodrugで、肝臓においてcytochrome p450であるCYP2C19およびCYP3A4で代謝されて活性型となる。そのため、それらの遺伝子変異や相互作用する薬剤の影響でclopidogrelの効果が減弱することが報告されている。CYP2C19は、SNPにより、活性を持たないヒトの頻度が欧米では2%であるのに対し、日本人では、20%に及ぶという報告がある。そのため、我々は、上記の30症例を対象にCYP2C19の遺伝子型を解析したところ、15%にCYP2C19活性を持たない症例を確認した。そして、それらの症例では例外なくclopidogrel活性が弱いことを見出した(2)。なお、上記の知見を日本動脈硬化学会にて発表したところ2008年7月14日発刊の製薬業界の業界紙である日刊薬業で紹介され、反響を呼んだ。また、CYP2C19の活性を持たない症例は日本人に多く(10-20%)、大規模なテーラーメイド医療が有意義である可能性があり、実現化に進めたい。第1世代のADP 受容体ticlopidineの血小板凝集抑制効果に関するデータはほとんど報告されておらず、ticlopidineについてclopidogrelと同様の薬効評価を行い、比較検討する計画である。

2.Antiplatelet therapy effectiveness study (APTEST)

抗血小板薬、主としてアスピリン、を服用中の症例を登録し、血小板凝集性を登録時と2年後に測定し、3年間イベント発症を追跡するという臨床研究を実施中である。血小板凝集計および全血凝集計を用いたアスピリンの効果を判定できる方法を確立し(3)、両者で解析しているが、440症例の登録を得て、現在、登録時データを解析中である。

3.睡眠時無呼吸症候群 (SAS) における血小板凝集性に関する研究

呼吸器内科、陳和夫先生との共同研究で、124例のSAS疑い症例の血小板凝集性の解析を行い、SAS症例では血小板凝集性が亢進しており、経鼻的持続性陽圧換気(nCPAP)療法により、一過性の凝集亢進時期を経て、3ヶ月後には血小板凝集性が改善することを見出した(4)。

4.Cilostazol

頻用されている抗血小板薬cilostazol (phosphodiesterase 3阻害薬)の薬効評価法を確立した(5)。

II. 血球貪食症候群に関する研究

我々が、血小板の研究で見出した遺伝子Munc13-4(6)(後述)が、家族性血球貪食症候群の原因遺伝子の一つであることが、米国のグループより発表された。細胞傷害性T細胞(CTL)は、ウィルス感染細胞等の標的細胞との間に、immunological synapseと呼ばれるタイトな細胞接着構造を形成し、そこに、perforinやgranzymeB等を含むlytic granuleを開口放出する(図2)。

家族性血球貧食症候群の発症機序

放出されたperforinは標的細胞の形質膜に小孔を穿ち、そこを通って進入したgranzymBは、標的細胞のcaspaseを活性化し、標的細胞にアポトーシスを導く。Perforinの遺伝子異常は家族性血球貪食症候群2型(FHL2)となり、Munc13-4はlytic granuleの放出に必須であり、その異常はFHL3となることが遺伝子解析により明らかにされた。最近、FHL4の原因が、lytic granuleの放出に関わる syntaxin 11と同定された。PerforinやMunc13-4の遺伝子異常によるlytic granuleの機能不全では、ウィルス感染細胞を排除できず、CTLが活性化のまま留まる。そして、活性化CTLはインターフェロンγ等を含むサイトカインを産生し続け、そのためマクロファージが過度に活性化され、骨髄で造血細胞を貪食し、血球貪食症候群となると考えられている。早期の骨髄移植が必要であり、骨髄移植が成功しないと予後は非常に不良である。我が国のFHLでは、FHL2、FHL3およびFHL4はそれぞれ約25、25、0%である(7)。我々は、我が国の小児科のグループ(代表、石井榮一愛媛大学小児科教授)と共同研究を進め、我が国の症例でperforinおよびMunc13-4の遺伝子異常の型と病態、重症度等との関連を明らかにした (8)。さらに私たちは、研究室で作成した抗Munc13-4抗体および抗syntaxin-11抗体と、市販の抗perforin抗体を用いたウェスタン法により、FHLの診断・病態解析に寄与することにより、本研究分野の発展に貢献してきた (7-12)。堀内は、現在、全国の小児白血病、悪性リンパ腫を把握、分析し、治療の改善につなげようとする研究グループJPLSG(代表、中畑龍俊京都大学小児科教授)のメンバーとして、全国の病院から週に1?2例ずつ我々の研究室に送付されてくる血液をウェスタンブロット法によるスクリーニング診断を行っている。なお、本スクリーニング診断を約3年間行ってきたが、2008年夏より、京大病院小児科の先生方に実施していただけることとなった。

基礎研究について

血小板活性化の分子メカニズム解明をテーマに、研究を進めている。大学院時代に高井義美先生(神戸大学)手ほどきを受け、Marino Zerial研究室(欧州分子生物学研究所)に留学時代に発展させた低分子量GTP結合タンパク質の生化学を糸口としている。

I. 低分子量GTP結合タンパク質に関する基礎研究

低分子量GTP結合蛋白質群は、癌遺伝子Rasに代表され、Rasスーパーファミリーと呼ばれる。主として細胞増殖を制御するRasサブファミリー、細胞骨格を制御するRhoサブファミリー、細胞内小胞輸送を制御するRabサブファミリー等に分類される。それぞれのメンバーは、共通の活性制御を受け、細胞内情報伝達のスイッチとして働いている(図3)。

RasスーパーファミリーGTP結合蛋白質

すなわち、GDPが結合したGTP結合蛋白質は不活性型であり、グアニンヌクレオチド交換因子(GEF)によって担われるGDP/GTP交換反応によりGTP結合型の活性型となる。活性型はエフェクター蛋白質と結合し、細胞内シグナルを下流に伝える。その後、活性型は、内因性のGTP水解活性とそれを促進するGTPase活性化因子(GAP)の作用により、再びGDP結合型の不活性型に戻る。また、RasはそのC末端がfarnesyl基という脂質の修飾を受け、その修飾がRasの膜への結合に重要であることが報告されていた。ドイツ留学中は、エンドサイトーシスを制御する低分子量GTP結合蛋白質 Rab5の制御機構に関する研究を行った。 Rab蛋白質は、結合するGTP/GDP依存性の制御に加え、抑制性制御因子RabGDI(GDP-dissociation inhibitor)による制御を受けると考えられていたが、我々は、その動態を形質膜透過型細胞(13)や単離したクラスリン被覆小胞(14)を用いて解析し、RabGDIが、GDP結合型Rab5を細胞質から局在すべき小器官に導くというpositive regulatorとしての機能を持つことを明らかにした(図4)。

Rab cycle

さらに、Rab5のグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)を発見し、Rabex5と名づけた(15)。Rabex5は酵母のエンドサイトーシス制御の必須因子として同定されていたVps9と共通のドメインを有しており、Vps9ドメインをもつ蛋白質がRab5に対するGEFであろうと提唱した。Rabex5はRab5のエフェクターであるRabaptin5と安定な複合体を形成しておりRabaptin5を介して膜上のGTP結合型Rab5に本複合体が結合するとRabex5は周囲のRab5を次々に活性化し、GTP結合型Rab5の集蔟した局面を形成するというモデルを提唱した。なお、現在、哺乳類では、9つのVps9ドメインを持つ蛋白質が同定されているが、そのほとんどでRab5に対するGEF活性が示されており、さらに、エンドソーム膜上にRab5の週属する領域が確認されており、我々の提唱が正しかったことが裏付けられている。

Ⅱ. 血小板活性化の分子メカニズムの研究

急性心筋梗塞は冠動脈におけるプラーク破綻後に生じる閉塞性血栓が原因と考えられている。脳梗塞も動脈血栓が原因である。動脈血栓の主役は、高いずり応力下でも血管壁と相互作用できる血小板であり、血管障害部位で血小板は速やかに活性化される。活性化血小板では、顆粒放出、凝集、変形等の反応をおこす。血小板から放出されるα顆粒はvon Willebrand因子やPDGF等を含み、その放出は血栓止血や血管リモデリングに重要な働きをし、濃染顆粒は血小板アゴニストであるADPやセロトニン等を含み、その放出は血小板活性化の増幅に重要な働きをしている。活性化血小板では、インテグリンαIIbβ3 (GPIIB/IIIA)が活性化され、立体構造を変化させることで、リガンドであるfibrinogenやvon Willebrand因子に結合できるようになる。それらのリガンドは分子内に複数の活性化αIIbβ3 (GPIIB/IIIA)結合部位を持つので、それらのリガンドが血小板同士を架橋して血小板凝集を引き起こす。同時にアクチン細胞骨格のダイナミックな変化をもたらし、血小板は著しく変形する。

1.血小板顆粒放出

血小板では遺伝子導入によるタンパク発現は困難であるため、私たちは細菌毒素(streptolysin-O)を用いて形質膜を透過型にした血小板を用いた顆粒放出アッセイ系(図5)を確立した。

形質膜透過型血小板を用いた濃染顆粒放出アッセイ

このアッセイ系に、精製したドミナントネガティブ蛋白質や阻害抗体等を加え、放出への影響を解析することで分子メカニズムを解析している。調節性開口放出の引き金はカルシウムイオン濃度の上昇であり、透過型細胞では細胞内外のカルシウムイオン濃度が等しくなるので、本アッセイ系ではカルシウム塩を放出刺激としている。

血小板濃染顆粒放出の分子機構

本アッセイ系では、非刺激時の放出率は全体の5%程度であり、刺激後約1分間で全体の60%の放出が生じるので、10倍以上のS/N比で開口放出を観察できる。本アッセイ系を用い、私たちはRab4がα顆粒放出を制御することを示し (16)、また、αおよび濃染両顆粒放出のための細胞質分画中の必須因子を生化学的に精製し、カルシウム依存性キナーゼprotein kinase Cα (PKCα)と同定した(17)。さらに、Rab27が濃染顆粒放出を制御することを見出した(6)。Rab27は非活性化状態の血小板で、大半がGTP結合型として存在していることを明らかにし、Rab27の機能は、RasやRhoのようなシグナルのスイッチではなく、非活性化時より、顆粒を放出準備状態に保つことであるというモデルを提唱した(18)。さらに、Rab27のエフェクターをアフィニティ法にて血小板細胞質分画より精製し、Munc13-4と同定した(6)。Munc13-4は、血球細胞に発現しており、脳に発現するMunc13-1、-2、-3とともにMunc13ファミリーを形成している。Munc13-1, -2, -3は神経伝達物質放出の鍵制御因子であるが、これまでにRabによる直接制御を受けているという報告はなく、Munc13-4がRab27のエフェクターであるという知見は、 Munc13ファミリーとRabを直接結びつける初めてのケースであった。
 低分子量GTP結合蛋白質Ralは、Rasサブファミリーに属し(図3)、種々の細胞機能を制御している。すなわち、エフェクターであるRalBP-1やexocyst複合体(小胞の形質膜への繋留因子)を介して、それぞれエンドサイトーシスおよび開口放出を、また、エフェクターは未同定であるが、細胞増殖(癌化)等を制御している(図7)。

Ralの活性制御機構と機能


ところで、20年以上前より、透過型血小板に非水解性GTPアナログを加えると、放出反応のカルシウム感受性を上昇し、カルシウムイオンの上昇なしに顆粒放出が誘導されることが知られていた。私たちは、最近、Ralとそのエフェクターであるexocyst複合体が、この非水解性GTPアナログによる放出反応を担っていることを証明した(19)。血栓形成部位では多くの血小板のカルシウムイオン濃度がsubmaximal (1μM以下)であることが報告されており、生体内での血小板では、Ral/exocyst複合体が重要な役割を果たしている可能性がある。今後、Ral-exocyst複合体経路とCa2+-Munc13-4経路のそれぞれの役割および相互関係・役割分担を解明していく。

2.血小板凝集・変形

我々はstreptolysin-Oを用いて形質膜を透過型にした血小板を用いた凝集解析系を確立し、低分子量GTP結合蛋白質Rho(20)、PKCα(21)およびアダプター蛋白質 ShcA(22)の血小板凝集における重要性を証明した。Rhoの機能メカニズムを明らかにするため、RhoAをbaitにしたアフィニティ法により、血小板抽出液よりmDia1およびDaam1をRhoのエフェクターとして同定した(23)。両者とも、直鎖状アクチンの伸長を担うforminファミリーに属する蛋白質であり、非活性化時には、N末端とC末端との分子内結合によりアクチン伸長反応を担うFH2ドメインがマスクされている。細胞生物学的実験により、それらのformin蛋白質は、GTP結合型Rhoの作用により活性型となりアクチン伸長を担うと考えられている。しかし、従来から行われている蛍光標識した単離アクチンを用いた液相のアッセイ系では、Rhoによる活性化は未だ証明されていなかった。私たちは、FH2ドメインを含む領域を固相化したビーズを用いたアッセイ系を独自に確立し、GTP結合型RhoによるmDia1およびDaam1の活性化を証明した(23)。

3.RalGAPとその遺伝子改変マウスを用いた研究(共同研究)

他のGTP結合蛋白質同様、Ralの活性は促進性制御因子であるグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)と抑制性制御因子であるGTPase促進蛋白質(GAP)によって制御されている(図3)。ところが、Ralに対するGAPに関しては、これまでのところ分子的にはまったく不明であった。我々は、Ralの研究を進展させるべく施行したアフィニティ法にて、いくつかのGTP-Ral結合蛋白質を見いだし、その中に、RalGAPを同定し解析中である(投稿準備中)。

参考文献

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発表論文

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血球貪食症候群関連蛋白質の解析をご希望される先生方へ

 ウィルスなどが感染すると、細胞障害性Tリンパ球やNK細胞が、感染細胞にアポトーシスを誘導し、排除します。しかし、その機能が低下すると、血球貪食症候群が生じたり、ウィルス感染が遷延することが知られています。 血球貪食症候群(hemophagocytic syndrome, HPS)は種々の原因で起こる疾患であり、感染や腫瘍、膠原病などに続発する二次性のものと遺伝的素因による原発性(家族性)のものがあります。原発性(家族性)血球貪食症候群はfamilial hemophagocytic lymphohistiocytosis (FHL) と呼ばれており、現在FHL2の原因としてperforinの異常 (*1)、FHL3の原因として Munc13-4の異常 (*2)、FHL4の原因としてsyntaxin11の異常 (*3) が同定されています(図1)。この疾患は骨髄移植を要することが多い重篤な疾患であり、迅速な診断が重要な意義を持ちます。日本人における35例の検討では、FHLのうち、約 20-30%がFHL2 、30%がFHL3であり (*4)、FHL4はこれまでのところ見いだされておりません。 細胞障害性Tリンパ球(CTL)や NK 細胞は、ウィルス感染細胞などの標的細胞との間にimmunological synapseと呼ばれる構造を形成し、そこに、perforinやgranzymeを開口放出します。そして、perforinは標的細胞の形質膜に小孔を形成し、そこからgranzymeが標的細胞内に侵入し、caspaseを活性化することで、標的細胞にアポトーシスを誘導します (*5)。Munc13-4やsyntaxin11はその開口放出を制御している分子と考えられています。さらに、Munc13-4の上流制御因子でありますGTP結合蛋白質Rab27 (*6) の異常 (*7) も血球貪食症候群を引き起こすことが知られています。このように、これまでに同定された家族性血球貪食症候群の異常は、perforin/granzyme系に集積しています。このシステムの機能不全によりCTLやNK 細胞の細胞障害活性が低下しますと、標的細胞を排除できないため、CTLやNK 細胞の活性化が持続します。そのためにおこる非特異的な高サイトカイン血症と、それが引き起こすマクロファージの活性化により血球貪食が引き起こされると考えられています。
 我々の研究グループでは、血小板顆粒放出機構の研究を進め、Rab27の重要性を示し、その直接結合する機能因子としてMunc13-4を同定致しました (*6)。その過程で、Rab27、Munc13-4は血小板に強く発現しており、血小板蛋白質のウェスタンブロット法で、少量の血液より、解析が可能であることを見いだしました。また、perforinや対象疾患の原因となる可能性がありますgranzyme BとFasLは現在解析系を構築中であり、完成後に解析させていただきます。これまで、FHLの診断では、FACS法等によるスクリーニングがperforinに対し行われてきましたが、未だ、Munc13-4やsyntaxin11等に対しては、確立されておりません。小児では多くの血液を採取することは困難でありますが、ウェスタンブロット法による解析では、血液1-2 mlで出来るようになりました。本研究では、少量の血液より血小板やリンパ球を単離し、ウェスタンブロット法によるperforin、Rab27、Munc13-4、syntaxin11等の解析を行い、FHLの診断のための参考データを提供し、さらに、症例が蓄積すれば解析を行い、本解析法のFHLの迅速診断法としての有用性を検証することを目的のひとつとしております。
 さらに、成人の遷延するウイルス感染(EB virus)においては、遺伝的なperforin異常をもつ症例が報告されております (*8)。また、重症の若年性関節リウマチ(systemic juvenile rheumatoid arthritis)は、ウィルス感染が引き金となり重症化し、血球貪食現象があり、NK活性が低下しているという報告もあります(*9)。このように、ウィルス感染が重症化、遷延化する疾患や未だ病因の解明されていないNK細胞活性が低下するような自己免疫疾患では、上記蛋白質に異常があって、ウィルス感染などを契機に症状が顕在化している可能性が否定できません。そのため、本研究での解析は、ウィルス感染が重症化、遷延化する症例、および自己免疫疾患等にまで対象疾患を広げ、解析し、病態を解明することも目的としております。

 

図1症例のリンパ球のperforin、Munc13-4のウェスタンブロット法による解析(Ishii et al., Blood, 2005) 。Munc13-4の異常が原因のFHL3症例ではMunc13-4が検出されず、perforinの異常が原因のFHL2では、成熟型perforin (最も下のバンド)が極端に減少している。

症例のリンパ球のperforin、Munc13-4のウェスタンブロット法による解析

検査方法

患者血液および、コントロールとして健常人の血液をACD (acid citrate dextrose)-EDTAスピッツにそれぞれ1-2 mlの血液を採取していただき、常温で京都大学循環器内科、堀内まで送付下さい。2日以内に到着すれば解析可能であります。京大病院循環器科の研究室にて血小板およびCD8陽性T細胞を採取し、ウェスタンブロット用のサンプルを調整致します。なお、ご連絡をいただきましたら専用のスピッツ(2 ml用)をこちらからお送り致します。
 家族性血球貪食症候群の疑いのある患者さんやウィルス感染が遷延している患者さん、あるいは、systemic juvenile rheumatoid arthritisのような自己免疫疾患で、Rab27、Munc13-4、syntaxin11、perforin等の解析をご考慮されます先生方には、メール(horiuchi(at)kuhp.kyoto-u.ac.jp)にて下記までご連絡ください。真空採血管や説明書、および患者さんへの説明書等をお送り致します。
なお、本方法は、あくまでスクリーニングであり、異常が認められました場合、遺伝子を検索する必要があろうかと考えております。遺伝子診断に関しましては、本研究をともに進めております佐賀大学および九州大学を中心に、すでにシステムが構築されておりますので、京都大学では行っておりません。なお、残ったサンプルは保存しておき、新たな候補遺伝子が出現したときに解析させていただくことをご了承ください。
本研究はヘルシンキ宣言に則して行われ、対象症例の個人のプライバシーは厳重に保護されます。疾患の性質上、可及的早期に診断しなければ生命に関わる状況も予測されますので、結果は、主治医に、速やかに報告いたします。学会発表、学術的論文でデータを発表する場合は、各個人が同定できるような形でのデータの公表は行いません。
本方法は簡便であり、それほどの労力がかかりません。疑い例を含め、遠慮なくご連絡ください。

参考文献

  1. Stepp SE, Dufourcq-Lagelouse R, et al. Perforin gene defects in familial hemophagocytic lymphohistiocytosis. Science 1999; 286: 1957.
  2. Feldmann J, Callebaut I, Raposo G, et al. Munc13-4 is essential for cytolytic granules fusion and is Mutated in a form of familial hemophagocytic lymphohistiocytosis (FHL3). Cell 2003; 115:461.
  3. zur Stadt U, Schmidt S, Kasper B, Beutel K, Diler AS, Henter JI, Kabisch H, Schneppenheim R, Nurnberg P, Janka G, Hennies HC. Linkage of familial hemophagocytic lymphohistiocytosis (FHL) type-4 to chromosome 6q24 and identification of mutations in syntaxin 11. Hum Mol Genet. 2005;14(6):827-34.
  4. E. Ishii, I. Ueda, R. Shirakawa, K. Yamamoto, H. Horiuchi, S. Ohga, K. Furuno, A. Morimoto, M. Imayoshi, Y. Ogata, M. Zaitsu, M. Sako, K. Koike, A. Sakata, H. Takada, T. Hara, S. Imashuku, T. Sasazuki, M. Yasukawa. Genetic subtypes of familial hemophagocytic lymphohistiocytosis: correlations with clinical features and cytotoxic T lymphocyte/natural killer cell functions. Blood 2005; 105, 3442-8
  5. Stinchcombe J, Bossi G, Griffiths GM. Linking albinism and immunity: the secrets of secretory lysosomes. Science 2004; 305: 55
  6. R. Shirakawa, T. Higashi, A. Tabuchi, A. Yoshioka, H. Nishioka, M. Fukuda、, T. Kita, and H. Horiuchi (2004) Munc13-4 is a GTP-Rab27 binding protein regulating dense core granule secretion in platelets. J. Biol. Chem.,279, 10730-10737.
  7. Menasche G, Pastural E, Feldmann J, Certain S, Ersoy F, Dupuis S, Wulffraat N, Bianchi D, Fischer A, Le Deist F, de Saint Basile G.Mutations in RAB27A cause Griscelli syndrome associated with haemophagocytic syndrome. Nat Genet. 2000 ;25(2):173-6.
  8. Katano H, Ali MA, Patera AC, Catalfamo M, Jaffe ES, Kimura H, Dale JK, Straus SE, Cohen JI. Chronic active Epstein-Barr virus infection associated with mutations in perforin that impair its maturation. Blood. 2004;103(4):1244-52. Epub 2003 Oct 23.
  9. Grom AA. Natural killer cell dysfunction: A common pathway in systemic-onset juvenile rheumatoid arthritis, macrophage activation syndrome, and hemophagocytic lymphohistiocytosis? Arthritis Rheum. 2004 Mar;50(3):689-98.
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具体的な手順

1.解析をご考慮の先生方はhoriuchi(at)kuhp.kyoto-u.ac.jpまでメールをください。(atを@に変えてメールをご送信ください。)患者さんへの説明書、取得していただく同意書、および採血スピッツをお送りいたします。所属病院に倫理委員会がございます場合にはその承認を得ていただけましたらと存じますが、その際には、京大病院に提出致しました私どもの書類を参考資料としてご提供致します。

2.送っていただくもの(宅急便<常温>で下記住所までお願いします。)

  1. 患者および健常人の血液1-2 ml (2 ml用ACD-EDTA入り専用真空採血管をお送り致します。)
  2. 患者同意書
  3. 患者病歴

3.送付先 < /p>

  • 〒606-8507 京都市左京区聖護院川原町54
  • 京大病院小児科 八角 高裕
  • tel. 075-751-3297(小児科病棟)
  • E-mail. yasumi@kuhp.kyoto-u.ac.jp
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お知らせ

堀内 久徳は2010年3月1日より東北大学加齢医学研究所に移動致しました。 リンク


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